日記

2021-05-01 10:00:00

#108 SRM 30↑008 Porter / #109 SRM 30↑009 Stout「比較醸造:同種同量の原料を使用したPorterとStout」

【5/1(土) Newリリース!!】

 

二種同時リリースです。

今回は本店BASEから「ボトル」でのリリースとなります。

 

Batch #108 – SRM 30↑008

「Porter」

---Style : Robust Porter

---ABV : 6.1%

 

Batch #109 - SRM 30↑009

「Stout」

---Style : Dry Stout

---ABV : 5.0%

 

 同種同量の原料(pH調整剤は除く)を使ってポーターとスタウトを造り分けてみました。ポイントはポーターにおいて「酸味と発酵香」を上手く醸し出す造りを意識したことです。逆にスタウトではこれらの風味を抑えて焦げ感を引き立てる造りにしました。よく言われるローステッドバーレイ(真っ黒に焦がした大麦)を使用しているかどうかという違いではありません。ローステッドバーレイはどちらにも使用しています。

 ポーターとスタウトはどちらもイギリス周辺を発祥とする黒系ビールです。スタウトはポーターから派生したといわれますが、両者の違いを説明するのは実に難しいです。醸造所によって味わいや解釈は様々ですし、文献によって語られている歴史も異なるからです。

 それらの解釈の中でも、僕が最もロマンを感じる話を紹介しておきます。今回の比較醸造において「酸味と発酵香」に着目した理由でもあります。

 それは「現代のポーターとフランダースオールドエールが共通の祖先を持つ」というものです。

 フランダースオールドエールは、ベルギーの東西フランダース州を発祥とする褐色のビアスタイルで、強い酸味を特徴とします。代表的な醸造所は西フランダースのRodenbachです。Rodenbachの銘柄の多くは、熟成期間の異なるビールをブレンドして造られています。

 このフランダースオールドエールとポーターが結びつくことを支持する歴史として、Rodenbachの実質的始祖Eugene Rodenbach(1850-1889)が、イギリスでビールのブレンドや熟成の技術を学んでいた(参考は輸入元HPなど https://www.konishi.be/brewery/rodenbachbrouwerij

ことが挙げられます。またこれとは逆に、18世紀のイギリスの醸造家たちがポーターを発展させる過程で、フランダースの醸造技術を取り入れて若いビールと熟成の進んだビールを同量ずつブレンドさせた、という記録もあります(ティム・ウェブ/シュテファン・ボーモン『世界のビール図鑑』)。

 そういえば、ポーターにまつわる有名な逸話として、ポーターの原型はThree Treadsという古く酸っぱくなったブラウンエールと新鮮なブラウンエール、ペールエールを混ぜたビアカクテルであったことも見聞きします。この逸話はちょっと眉唾物ではありますが、なんとなくフランダースオールドエールとの関係性はほのめかされます。

 以上のことから、歴史的なポーターにとって「熟成による酸味」が特徴的な要素であっただろうと思われます。

 さらに、酸味が出るまで熟成の進んだビールには独特の発酵香があったことも想像できます。なぜなら、熟成中に酸味を付与するのは、乳酸菌などのバクテリアやブレタノマイセスなどの野生酵母だからです。特に、ブレタノマイセスに由来する「馬の毛布」のようなアロマは、伝統的で本格的なポーターの特徴香であるとすらいわれます(『Michael Jackson’s Beer Companion』など)。

(ベルギーのランビックのイメージが強いブレタノマイセスですが、実はその名の由来はBritish Fungusのギリシャ語訳だそうです。)

 さて、このあたりの歴史を尊重すると、「スタウトと比較してポーターには酸味と発酵香が顕著である」という解釈が一理として挙げられます。これらの特徴は本来であれば、ブレタノマイセスによる長期間の発酵で達成するのが歴史に沿ったやり方ですが、簡易的には短期間の乳酸発酵やベルギー酵母を使用して表現するのも面白いかもしれません。しかしこれではスタウトと並べられる現代のポーターとは全く違うビールになることは目に見えています。

 そこで今回は、スタウトがポーターから派生したというAサイドの歴史も尊重して、「同種同量の原料を使ってスタウトとポーターを造り分ける」こととしました。さんざんフランダースオールドエールとの関係性など書いておいてなんですが、今回の醸造では特殊な微生物や長期熟成を取り入れたわけではありません。飽くまでも今日におけるポーターとスタウトの枠内で行ったものです。

 製法の違いや狙いについては表の通りなので割愛します。諸々の理由から、イギリス由来の原料をほとんど揃えることができなかったのですが、今回のポイントは本格的なイングリッシュスタイルのものを造ることではないので、その点ご容赦ください。