日記
ちょっとだけ味の違うビールを混ぜてみる
【今週のアベ氏のつぶやき】
今週はリリースありません。来週2作同時にリリースします。同時リリースということは、そう、飲み比べ企画です。 CBB Brewing Labでは、これまでも何度か飲み比べのための対照実験醸造を行ってきました。
#1 GOLDEN 001 vs #3 GOLDEN 002
→米麹の比率を変えたゴールデンエール(5% vsごく微量)
#14 Hop Schema 001 vs #17 Hop Schema 002
→同一品種ホップでドライホッピングのタイミングを変えたIPA(発酵最盛期vs発酵終了直前)
#37 CPA 004 vs # 38 CPA 005
→異なる加工形態の同一品種ホップを使用したペールエール(乾燥ペレットホップvsフレッシュホップ)
#54 RED 004 vs #57 CPA 006
→NZ Cascadeを同じホップスケジュールで投入したモルトバランス違いのビール(レッドエールvsペールエール)
#68 Integration 004 vs #69 estenol 001
→酵母違いのヴァイツェン(ベルジャンアビー酵母vsヴァイツェン酵母)
改めてみると面白い!予想通りの違いがあったもの、なかったもの、予想外の違いがあったもの、さまざまですが、いずれにも好奇心を大いに満たされましたし、その後の醸造にも役立っています。前からコリアンダーの産地違いベルジャンホワイトもやりたいって言ってるけど、なかなかやらせてもらえません!
さて、このような企画では当然まずは飲み比べて楽しんで欲しいのですが、毎回その後におすすめしていることがあります。それは二つを混ぜるということ。
ピルスナーとスタウトのハーフ&ハーフのように、全く異なる二つのビアスタイルを混ぜれば新しい風味のブレンドビールが完成することは想像に難くありません。一方で、上にあげたペアは、ピルスナーとスタウトほど大きな風味の違いはなく、いっけん混ぜる意味がないように思われます。しかし、土台が同じで風味が僅かに違う二つのビールを混ぜると、不思議なことに両者の平均では説明できない、分厚い味わいのブレンドビールが出来上がることが多々あります。
ちょっとマニアックな例えをしてみます。シンセサイザーという、音を波形から編集・合成して奏でる電子楽器があります。その音作りのテクニックに「デチューン」というものがあります。これは二つの波形の波長つまり音程を僅かだけ(半音よりもっと狭く)ずらして重ねることで「うなり」を生み、厚みのある音を造るテクニックです。交響楽団の弦楽器隊の音を再現するのに応用されます。上記のようなブレンドはまるで味のデチューンのようです。
ふと思ったんですけど、もし風味を波形で表すことができたら、風味の「干渉」とか「うなり」みたいなものも物理的に定義できて、職人の経験によるとされるブレンドテクニックも説明できるようになるんじゃないかなー、とか、、、。ちょっとこれ以上はやめときます。では来週の2種同時リリースをお楽しみに!ちなみにテーマは「水」です。