日記

2020-08-17 10:00:00

#75 QS 003 白麹Gose 「白麹のクエン酸を利用した速醸サワービール」

【8/17(月) 新作リリース!!】

 

Batch #75 – QS 003

「白麹Gose」

-----Style : Contemporary Gose

-----ABV : 5.1 %

 

 短期間に醸成可能なビールならではの酸味を模索する醸造シリーズ「QS (Quick Sour, 速醸型サワービール)」。3作目は白麹のクエン酸を取り入れた実験的ゴーゼです。

 原料穀物のなんと25%を乾燥白麹(米麹)に置換。マッシングで糖化を行うと同時にクエン酸を引き出しました。麦汁段階で食塩とコリアンダーを加え、発酵中に少量のハラタウブランホップを投入しました。

 酸味は通好みするほど強くありませんが、非常に飲みやすく柔らかです。塩味がスポーツドリンクよろしくしっかり効いており、これが麦や米麹の旨味を引き立てています。多めに加えたコリアンダーと適度なドライホッピングにより、麹の独特なアロマを抑えると同時に華やかさを付与しました。それでもなお口中で感じる埃っぽさは麹に由来していると思われますが、嫌味には感じず、どこかノスタルジックな趣があります。

 白麹マッシングはごく最近になって日本のみならず海外でも注目されている手法です。乳酸発酵よりも短時間で自然由来の酸味を得ることができるのがメリットです。ところが、今回の麦汁仕込み、通常は2時間ほどで終わる濾過工程に10時間もかかりました、、、。原因はまだ調査中ですが、頑張ったので、飲んでください。

 

〇ゴーゼについて

 ゴーゼとは、ドイツはゴスラーで発祥しその後ライプツィヒで展開された小麦のサワービールで、伝統的なものは乳酸発酵を伴い、塩とコリアンダーを加えて造られます。ホップはほとんど使われません。伝統的なライプツィヒスタイルのものにはほとんどお目にかかれない一方で、近年では世界中のクラフトブルワリーが独自の自由な発想でゴーゼを造っています。それらはBAのビアスタイルガイドラインでいうところの「コンテンポラリーゴーゼ」に分類されます。

 コンテンポラリーゴーゼでは、塩やコリアンダーは使っても使わなくてもよく、代わりにフルーツなどで風味付けされます。ガイドライン上、ホップは効かさないことになっていますが、最近ではドライホッピングにより、あたかもフルーツのようなフレーバーを付与したものもザラにあります。麦汁を乳酸発酵させて酸味を醸成するのが一般的ですが、より簡易的にアシッドモルトを20%ほど加えるか、食添用乳酸を使用するレシピも見つけられます。

 本作では乳酸発酵はさせずに白麹のクエン酸で酸味付けしたことと、ドライホッピングを施したことから、当然コンテンポラリーゴーゼに分類されます。しかし、伝統的なライプツィヒスタイルゴーゼにも敬意を払い、塩とコリアンダーをしっかり効かせて、ドライホッピングの量は麹臭をマスキングする程度の必要最低限にとどめました。

 余談ですが、こうなってくるとクラフトビアシーンにおけるゴーゼとベルリナーヴァイセの本質的違いはどこにあるのでしょうか。スタウトとポーターのように、一言目から精神論で片づけてしまう人もこれから出てくるのでしょうか。

 

〇白麹について

 白麹は黒麹の突然変異株です。白・黒ともに焼酎の原料穀物を糖化するのに使用されます。日本酒や味噌・醤油などの原料糖化に使用されるのは黄麹です。白・黒麹は、黄麹と違ってクエン酸を多く生成します。クエン酸がもろみのpHを下げ、雑菌の繁殖を抑えるので、白・黒麹は温暖な地域で造られる焼酎や泡盛の製造に適しています。このクエン酸の雑菌抑制効果や酸味それ自体が日本酒造りでも着目され、近年、白・黒麹を使用した新しいスタイルの日本酒も造られています。味わいや糖化力の観点から黒麹よりも白麹がよく使用されるようです。

 クラフトビアシーンでもごく最近、白麹を使ったサワービールを稀にみかけるようになりました。サワービールは通常、良質な酸味を得るために短くとも日単位の乳酸発酵を必要とします。しかし、白麹を乾燥米麹などの形態で原料穀物として使用することで、自然由来の酸味を数時間のマッシングで得ることができます。同じく自然由来のクエン酸を含むフルーツを大量投入するよりも風味への影響が抑えられます。また、ヨーグルトや漬物に含まれる乳酸とは質の異なる爽やかな酸味も期待できます。さらに白麹には、原料穀物中糖分に結合したリナロールなどの香気成分を遊離する酵素活性があります。ラベルに「白」と記載された芋焼酎の華やかな香りはこれに由来します。この酵素活性を利用してビールに華やかな香りを付与する製法にも可能性があります。

 一応断っておきますが、本作QS 003でも採用した白麹マッシングという手法は、日本酒造りのように生きた麹菌を繁殖させる製麹とは違って、あくまでも米麹に残存する酵素を利用したものです。製麹や乳酸発酵よりもロマンに欠ける気はしますが、乾燥モルトの種々の酵素を利用する通常の麦汁造りと同じ原理を適用でき、ビール醸造によく馴染むサワリング手法だと思います。ちなみに米麹は英語で「rice malt」といいます。一気に親近感がわきます。

 

〇本作の反省点(ブルワーの方向け)

一番の反省点はロイタリングに10時間を要したことです。本仕込みにおける米麹の取り扱いは以下の通りです。

 

・グレインビルは大麦麦芽50%、小麦麦芽25%、乾燥米麹(白)25%。

・米麹は粉砕せずに使用。

・米麹を全グレインの3倍(L/kg)のマッシュウォーター(55℃)に投入して一晩(12時間)放置。翌日の温度は43℃、pHは3.4。

・米麹の入ったマッシュを昇温して残りのグレインを投入し、67℃で60分、78℃で5分糖化。ファーストウォートのpHは4.4。

 

 詳細な原因はまだ調査中ですが、こうして書いてみると雑ですね。米麹のマッシングが十分にできていなかったか、麦芽投入時のマッシュpHが低過ぎため基質タンパク質あるいはその分解酵素に支障をきたした可能性があります。少なくともマッシングは別々に行った方がよさそうです。あまり手間をかけすぎてもこの手法のメリットがなくなりますが。

 もう一つの反省点は、完成ビールに思ったほど酸味がのらなかったことです。よく言うと万人受け。FG到達時にはpHは3.8で酸味も顕著でした。それからダイアセチルレストのため2日間置くと、pHは4.5まで急上昇し、酸味も弱くなりました。ワインのマロラクティック発酵的なことだったら面白いのですが、多分そんなことはなくて単純に麦汁段階からクエン酸の総量が少なく、塩基性のアミノ酸やらなんやらと中和しきったのだと思われます。かと言ってあまり白麹の量を増やすと味わいやロイタリングに影響がありそうなので、少ない白麹量で効率的にクエン酸を引き出す方法が求められます。