日記

2020-08-10 10:00:00

#74 Untitled 004Phenol Soup「フェノール祭り」

【8/10(月) 新作リリース!!】

 

Batch #74 – Untitled 004

「Phenol Soup」

-----Style : Herb & Spice Beer / Smoke Beer

-----ABV : 5.8 %

 

 「Untitled」は一般的なビール醸造には用いられない原料・製法の組み合わせを試みる醸造シリーズ。造っている身としては、表現の甲斐があり、いつも以上に意欲的になれるシリーズです。が、今回はちょっと飛ばし過ぎたかもしれません。とりあえず、本作で特徴的な原料を並べて書いてみます。

 

燻製麦芽

タイム

オレガノ

クローブ

ヴァイツェン酵母

 

 取り留めのない組み合わせに見えますが、これらの原料に共通するのは「フェノール類」と呼ばれる化合物を含む、あるいは生成することです。フェノール類は主にシートの左下図で示した構造を基本骨格に持つ化合物で、殺菌作用を有するものがあり、生活上用途においては消毒剤に利用されます。うがい薬にも含まれます(図らずもタイムリー)。なので、フェノール香というと、まずは消毒剤を思い浮かべます。

 消毒剤の他にも、フェノール香は酒や食を嗜む方にとって身近な香りです。上に並記した通り、いくつかのハーブ&スパイスの香りを特徴づけているのはフェノール類です。クローブに含まれるオイゲノールが特に有名です。また、酒の肴として人気の高い燻製食材の風味はフェノール香が中心です(燻製はもともと殺菌目的でした)。ビールや、日本酒、ワインといった醸造酒でもフェノール香が特徴となる場合があります。基本的にはオフフレーバーとして考えられることが多い一方で、野生酵母や特定の酵母を意図的に利用した醸造酒では、4VGなどのフェノール類の香りが好ましいとされます。ヴァイツェンの特徴としてクローブ香が挙げられますよね。ランビックの馬小屋香もフェノール類に由来します。その他、熟成泡盛のバニラ香も4VGから派生するフェノール類由来です。

 しかしなんといっても、フェノール香を愛してやまない酒飲みは、ある種のウイスキーのファンでしょう。ピートで強くいぶされたモルトで造られたウイスキーが放つ燻製や薬品のような香り、あれがまさにフェノール香です。ピートでのモルトのいぶし度合いのことを「フェノール値が何ppm」といったりします。

 実は本作Untitled 004も、ピートの効いたウイスキーにインスパイアされてレシピを書きました。ピートモルトを使わずに、その香りを表現しようとして、上記の原料を組み合わせようと思ったのです。燻製麦芽の他に濃色のカラメル麦芽やチョコレート麦芽も使用しましたが、それはウイスキーの外観や焦がした木樽の香りを表現したかったからです。また、食塩を加えたのは、某スコッチウイスキーの潮っぽい風味がレシピ制作時に頭をよぎったからです。

 結果として、皆さんにウイスキーを感じていただけるかどうかはわかりませんが、社内テイスティングの第一声は「正露丸」だったので、ピート香は表現できたということでしょう。ちなみに麦汁段階ではベーコントマトスープでした。燻製と種々のハーブ&スパイス、塩が入っているので、そりゃそうか。しかしまあ、ご想像の通り、めちゃくちゃ変わった味わいです(笑)。好奇心旺盛な酒飲みや食通の方には是非体験してみて欲しいです。食事との組み合わせにもかなり可能性があると思います。面白いと感じていただければ幸いです。